合格体験記「弁理士試験 最終合格への道程 」
弁理士試験 最終合格への道程
- 平成10年度合格者の合格体験記 -
発行 | 弁理士専攻 代々木塾 |
---|---|
編著 | 弁理士 大塚 康英 |
発行日 | 平成11年1月12日 |
定価 | 非売品 |
♪塾長のご了解を得ましたので、内容を掲載致します。
合格体験記(代々木塾発行-最終合格への道程-)
吉田(注;合格当時)智子
受験回数(多枝5回,論文3回)
年齢(33才)
職業(会社員)
最終学歴(京都大学 農学部 食品工学科)
選択科目(商品学,繊維工学,水産学)
受験講座(H6年度基礎講座,答案構成講座,答案練習会,
H7年度上級ゼミ,答案構成講座,多枝答練,答案練習会,
H8年度上級ゼミ,答案練習会,
H9年度答案練習会,
H10年度答案練習会)
私は、今年運良く最終合格できました。
が、あんまりカッコイイ勉強方法をとっていませんでしたので、
主に、仕事を持ちながら勉強した苦労と、
大阪で本年合格者が少なかった(私だけだったらしい・・・・)水産学の勉強方法について
好き勝手に書いてみたいと思います。
私の(妙な)勉強方法や受験動機等についての一般的な合格体験記は
○学書院の合格体験記に載るかもしれませんので、
興味のある方は、そちらを読んで下さい
(他の会社の本を宣伝してしまった・・・・塾長ごめんなさい。)。
仕事を持ちながらの勉強の苦労
これは、もう、「非常にタイヘンでした。」としかいいようがありません。
勉強を始めた当初から
勉強の為に仕事を辞めることはすまい!
とココロに誓っていました。
というのは、「仕事あっての資格である」と考えていたからで、
仕事を的確にこなすために志した資格である筈なのに
「資格」そのものが目的になってしまって仕事を辞めるのは
本末転倒であると考えていたからです。
しかし、「合格してなんぼ」の資格ですから、
取り敢えず合格するために、仕事をすっぱり辞めることも、
ある意味で正しい選択であると今では思います。
仕事と両立する上で、自分に課していたことがあります。
それは、絶対に「勉強するから仕事をセーブしてくれ!」と言わないことと、
与えられた仕事については、「絶対に手抜きをしない」ことでした。
企業によっては、勉強を奨励し、
仕事もそれなりに考慮して下さるところもあるかもしれません。
そういった会社なのであれば、それはそれで良いと思います。
が、私自身がそういうのは嫌だったので・・・・・。
これは、口で言うのはたやすいですが、
実行するのは、非常に非常にシンドイものでした。
特に勉強し始めて間もなくの頃に
知財協会のバイオテクノロジー委員会に入会することになったのは、
悲劇の始まりでした。
バイオ委員会は、製薬会社さんの優秀なバリバリの特許部員がズラリと並んでおり
バイオを少しばかりかじっている程度の当社が入会できたのも不思議なのですが、
無理言って入れて頂いたため、手抜きはできないわ
宿題は多いは
内容はチンプンカンプンだわ・・・・・。
委員の1人で、当時既に合格されていた某社の原先生には
「合格したければ、すぐさま委員会をやめなさい!」などといわれていました。
「何で私は、他の受験生が答練の為に必死で勉強している時に
休日出勤までして、訳の分からないバイオの判例の和訳をしているんだろう??」
なんて考えて、涙が出てくることも、少なくありませんでした。
しかし、今となっては、
優秀な方々とお知り合いになれた
有意義な2年間であったと感謝しています。
毎週一回、代々木塾主催の勉強ゼミに参加していましたが(←今回注釈)
月一回、バイオ委員会で東京に行く日が
必ずゼミの日に当たるため、
ゼミの次の日に問題をもらって、家で(喫茶店で?)解答を書き、
先生の事務所に送りつけて無理矢理採点して頂く
・・・という非常にあつかましい頼みを
1年間聞いて下さった、塾長を始めO先生、K先生に、深く深く感謝しております。
とはいえ、こんないいカッコしいの私も
1度だけ、「仕事を辞めて勉強に専念したい!」と思ったコトがありました。
昨年の今頃(H9.12月)のことです。
半日ドックで悪いところが一気に発覚したからでした。
両親は
「こんな生活を続けるのは、もう無理なんだから、どちらかにしたらどうか?」
と言いました。
親として
「せっかくいい職場に恵まれているんだから、
仕事は辞めず、勉強なんかやめて、嫁にでも行って欲しい・・・。」
という気持ちだったのは当然でしょう。
私としては、
「ここまでやったのに、合格できずにあきらめるのは絶対に嫌」
だったし、かといって、バイオ委員会もなんのそのと必死でやってきて、
この期に及んで
「勉強したいから仕事を辞めます」
というのもこれまたシャクで、非常に悩みましたが
どちらか選ばなければ、生活は改善できません。
そこで出した結論が、「仕事を辞める」ことだったのです。
「カッコつけずに事情を話して、仕事を減らしてもらって両立を続けること」
だってできたかもしれません。
が、「セーブしてもらったから合格したんだ」と言われたくなかったし、
ここで手を抜くと、人はそこしか見てくれません。
「最近仕事の質が落ちたね」と言われるくらいなら
スッパリ辞めようと思いました。
結局は、どちらもどうしてもあきらめられず
両方とも頑張ることにしたわけですが、
今まで通りのやり方では到底持たないのは目に見えていますし
何より、精密検査や何やらで、年内はほとんど勉強していなかったので
例年以上に時間が限られていました。
しかし、このことが、今年の合格につながったのではと思います。
今までは、とにかく、レジメを1つ1つ正確に全部覚えないと気が済まなかったので、
レジメを回すどころか、本試までに最後のレジメにまでたどり着くことすらできないような状態でした。
が、今年はとにかく時間が足りなかったので、
これをあらため、たとえ項目落ちしても、
とにかく、基本レジメ(論文サブノートのみ)を回すことにしました。
そして、落としてはいけない項目は何か?
を常に考えながら勉強しました。
今から思えば
こんなアタリマエのことができずに2度も本試に臨んだのは、大馬鹿者でした。
それから、非常に有効だったのは、
基本レジメを1日に1つ選んで、とにかくまるまる書き写すことでした。
答えをみながら書くなんて馬鹿げている・・・と始めは思っていましたが、
ある弁理士の先生から
「とにかく、ダマされたと思ってやってご覧なさい。」
と勧められて、実行しました。
ところが予想に反して、コレが結構良いのです。
というのも
自分のヘタクソな答案に限って
一旦書いてしまうと変に手やアタマに残ってしまいます。
その上、正解を新たに書き直したりすると、時間がかかってしょうがありません。
「項目が挙げられるか?」だけ最初にCHECKした後
ひたすら、お手本通りに書くことによって
正確な文章表現だけを、手やアタマに覚えさせることができてきたのです。
昨年と今年は、ゼミにも行っていなかったので
答練以外に答案を書いたのは、この時だけで
今年は答案作成の数は、極端に少なかったように思いますが
効果はあったと思います。
なんだか、脱線してしまいましたが
このような、半ば開き直った勉強法のおかげで、今年合格できたのでしょう。
病気のことがなかったら
今でも、ダラダラ、勉強していたんだろうなぁ
・・・・と思うと、今は、半日ドックに感謝の気持ちで一杯です。
水産学の勉強方法
1.選んだ動機
この科目は、はっきりいってマイナーです。
とることを敢えて勧めようとは思いません。
なぜなら、合格者が非常に少ないからです(本年は、東京1名,大阪1名でした。)。
私が合格できたのは、ひとえに、ヤマがあたったからです。
昨年は、とんでもない問題がでて(「系群」だっけ??・・・それすら忘れている・・・・)
水産学の受験生からブーイングが出ていました
(試験委員の先生の書いた、「系群」についての論文をCHECKされていた
・・・という、スバラスイ受験生も一部いらっしゃったようですが)。
この科目は、近年、このように過去問とかけ離れたところから出題されるので
敬遠されているようです。
それでも、私は、受験を志した5年前から水産学を選択するという意思は
一度も変えませんでした。
それは、他にとる科目がなかったからです。
全然、得意な科目がなかったのです。
だから、学生時代から専門で勉強している人があんまりいなさそうで
自分自身が楽しく勉強できる科目をとるしかありませんでした。
そういうわけで、元水泳部で、海が好きで、ダイビングのライセンスをとったばっかり
・・・・という理由から、水産学を選びました。
過去問の解答集が出回っていたのも、一つの理由でした
(結局、今年の問題はあまり載っていませんでしたが
これらは、「出れば皆書く」ので、押さえておかねばならないアイテムでしょう。)。
とにかく、そういう訳で、あんまり勧められないような気も致しますが、
「それでも私には、水産学しかないんだ!」
とおっしゃられるかたの為に
私のとった勉強方法と使用した資料等について以下に記載します。
但し、はっきり申しまして、私の勉強の仕方は
客観的にみるとかなりいいかげんでふざけているような気がします。
参考にして頂くのは光栄ですが
「吉田のせいで、水産学に失敗した!!」
と怒らないで下さいね。
2.勉強方法
始めのころは、とにかく、過去問解答集をひたすら読みました。
平成5年頃までは、比較的、過去問から出ていたように思ったからです。
しかし、基礎もないのに、答えだけ読んでも
あんまり意味がなかったなぁと
今となっては思います。
しかし、上述した様に、「出れば皆書く」ので、やらない訳には・・・・。
とはいえ、今年過去問から出ても、完璧には書けなかったと思います。
私の中での過去問の位置づけは
「チラとでも かすっておいて なんか書け!」
っていう感じでした。
次に行ったのは、下記の基本資料にも示しましたが、
「どうやら過去問の解答を、ここからとったらしい」
と思われる水産高校の教科書(昔から、水産学の受験生の間で出回っていたようです)
を苦労して購入し、その教科書を、
電車に揺られながら読むことでした。
因みに、必須の勉強法にも共通することですが、
私は、静かなところでは眠ってしまう
・・・という「分かりやすい性格」なので、
勉強は、ほとんど
ウルサイ喫茶店
(ファーストフードや180円のコーヒーで3時間粘れる店はかなり覚えました。
いつでも聞いて下さい。)
か、ユレが激しく、乗り換えのスリルが味わえる電車
(JRの鈍行がオススメ)の中で勉強しました。
あと、平成5年頃から、時々、変な時事問題が出る傾向にあったので、
新聞やTVをCHECKしていました。
具体的には、息抜きをかねて、「NHKスペシャル」等で、
「海」や「魚」や「イルカ(どこが水産学やねん!)」
に関する特集を結構見ていました。
それも、新聞のTV欄を毎朝CHECKできるようなマメな性格でもなかったので、
家に帰ってたまたま両親がTVを見ていたら一緒に見る程度の、
かなり行き当たりばったりなものでした。
しかし、このNHKスペシャルは非常にためになりました。
TVでやるくらいだから、あんまり専門的でもなさそうだし
どうせ、何十年も前から解かっているレベルのことをやってるんだろう
と思うなかれ!
結構最新の情報が、しかも分かりやすくビジュアルに表現されていて
「うううむ!これはいい!!」
と感心して見ていました。
因みに、グルメ番組も、「魚料理だから」という理由で見て良いことにしていました。
新聞も、これまた毎日ではなく、気がむいたら・・・という程度でした。
しかし一時期はこれに凝っていたこともあり、
残業で夜12時近くに帰ってから、
新聞を2時間ぐらい入念に読むという日々が半年ぐらい続きました。
そのころのストックで生き延びたような感もあります
(しかし、2時間も読む程、水産学関連の記事がある筈もなく、
当然殆どの時間はスポーツ欄に費やされていました。)。
CHECKする記事内容は
主に「不漁の話」,「海の汚染の話」等でしたが
大した記事が無くてがっかりした日は
スシネタの欄を切り抜いて嬉しがっていました。
この他、平成8年のような(「我が国の水産貿易に関して何か書け!」・・・・とか何とかいう)
変な問題に対抗するべく
ブルーバックス等を乱読して
小ネタを仕入れていました。
これらの本は、表現はあまり学術的ではないのですが
おもしろく読めて、しかも最近の水産業の問題の核心をついていたりするので
大変良かったと思っています。
実際、私の水産学の勉強の基盤となったと言っても、過言ではありません。
そして、2次を受けるようになってから毎年恒例になっていたのが
必須5科目が終わったその日に会社に寄って
(城北公園から近い・・・・)、
「現代用語の基礎知識」
の最新版をコピーして帰ることでした。
今年の「世界海洋法条約」(大問)について、私は殆ど知りませんでしたが
試験の当日の朝読んだ頁にのっていた用語を
勝手に「コレに違いない!」と決め付けて、A3の1枚を埋めましたが
このカンのおかげで今年合格できたのだと、本気で思っています。
最後に、出題傾向が外されるのが恐怖であるのは
どの選択科目についても言えることですが
あんまりそれに振り回されて科目を変えないほうが良いのでは?と思います。
嵐の中、カツオの一本釣りのようにどこまでも幻の魚(科目)を追い続けるより
定置網で、のーんびり待っていれば
自然と問題の方から、自分のテリトリーに寄ってきてくれるのではないでしょうか?
「傾向は 一転二転で 元どおり」
・・・・というのが、私の考え方でした。
私は、あつかましくも、常に「最終合格」するつもりで勉強していましたので
1年目から、選択科目3科目を決めて
(当時は繊維工学でなく生物化学を取っていたのですが
なぜやめたかは語ると長いのでやめます。)
同時に勉強していました(コピーしてただけとも言う)。
3.資料
(基本資料)・・・重要度の順に記載してみました。
◆現代用語の基礎知識(海洋,漁業,環境,等、関係ありそうなところは何でも!)
・・・最近の語句説明は、ほとんど出ているような・・・。
但し、どのカテゴリーに記載されているか、結構わからないので、
食品等の欄にも目を通す等の工夫が必要かも。
◆上記の過去問解答集(コピーは塾長がお持ちの筈です・・・)
・・・ 何代にも亘ってコピーを繰り返したノートでしたので、
順番もバラバラで、字も読みにくく、並べ替えたり、解読するのに、苦労はしましたが、
これを一から作られた方々の苦労を思うと、ありがたくて涙がでました。
非常に分厚く、3cmくらいのB5のバインダーがパンパンになるぐらいありました。
◆水産高校の教科書(「水産一般」海文堂,「漁業」・「漁場環境」文部省)
・・・これらは、なかなか入手できず、東京の八重洲ブックセンターでようやく見つけました。
これらには、上記の過去問解答集の解答とソックリの記述があり、
どうやら、これから解答を作ったのでは・・・・と思われる点で、
解答集のコピーの読みづらい箇所を確認する意味で重宝しました。
◆新聞記事
◆漁業白書(農林統計協会)
・・・政府(?)の持っている問題意識を知れば、
きっと国家試験(?)に役立つに違いないと思って読んでみました。
効果は不明ですが、若年層の漁業離れをくいとめる政策等が記載されていたりして
興味深く読めました。
◆Newton(海洋特集)
・・・写真がキレイで、息抜きとしても、最新の用語を知る上でも、とても良かったです。
実際には本試には出ませんでしたが・・・・。
(参考資料)・・・・
以下は、息抜きの要素が大きかった本ですが、これらのおかげで、
自分なりに水産学の解答を何でもいいからひねりだせるような引き出しができたように思います。
◆海洋のしくみ(東京大学海洋研究所)
・・・見開き1頁で一話完結なので、読み安い。
今年ヤマをはっていて、出なかったので、
来年もヤマをはるつもりでした(根拠はどこにもありません)。
◆海と魚たちの警告(小島 正美,北斗出版)
・・・魚の乱獲の問題提起等のほか、最近のバイオ魚の養殖等の記載もあり、おもしろい。
◆大衆魚の不思議(河井 智雄,講談社ブルーバックス)
・・・同上
◆魚のおもしろ生態学-その生活と行動のなぜ(塚原 博,講談社ブルーバックス)
・・・・魚を食べるのが楽しくなりました。
◆フグはなぜ毒を持つのか(野口 玉雄,NHKブックス)
・・・ここまでマニアックに読む必要はなかったようにも思う。
テトロドトキシン(フグの毒の名前)さえ知っていれば充分だ!?
因みに、水産学の受験生の皆さんが買っているらしい「水産学ハンドブック(辞書のようなもの)」は、
本試で失敗するたびに本屋で手にとっては、
あまりの高さ(6,000円は下らなかった)に
ついに購入せずに合格してしまいました。
ああ、ヨカッタ・・・・・。
最後に、元上司でもあり、私に受験を志すきっかけを与えて下さったS.M.先生と
「私は絶対合格できるんだ!」と信じ込ませせて下さったM.M.先生
そして、ワガママを色々聞いて下さった○○塾長以下の代々木の講師の先生方に
深く、深く、深ーく感謝致します。
皆様の来年度の最終合格を、本当に心からお祈り申し上げます。