特許のいらない世界

2016/04/05  智@PAT日記 

素晴らしい技術を、特定の者に独占させる特許は、
商売をやりにくくする!けしからん!
技術の進歩を阻害する!とんでもない!
・・・なぁんていう意見がある。

特許のいらない世界

平成元年 春。
新卒採用で、工業所有権センター(*注1)に配属された。

入社前の想像とは、かなり違った点もあったが
“この仕事って自分の性格に合っているのでは?”
という直感は正しかったようで
お蔭様で“特許この道28年目”となる。

しかし、入社してしばらくして
ある疑問にぶち当たった。

私の仕事って・・・・・
本来、無いほうが良い仕事なのでは??????

特許など無くても
皆が
譲り合い,尊重し合い,切磋琢磨し合い
仲良く技術を進歩させ
互いに自由に商売出来る。

特許のいらない世界

もしこれが理想の世の中なら
特許の仕事なんて、必要無くなるってことでは!?

運良く、新入社員で巡り合えた
『天職』
(・・・と自分では思っているが
周りがどう思っているかは不明。)

それなのに、無いほうが良い仕事ってどうよ!?

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

高校生の頃は、まだ具体的に将来の事を考えていなかった。

修学旅行中の夜の船内。
(余談:全日程ともフェリー泊。
という前代未聞のハードな旅行。
あまりの不評ぶりに試行一年で廃止に・・・)

医者や弁護士になる夢を語る友人達に比べると
何にも考えていないことが発覚。

一方、小さい頃から
趣味でエレクトーン(Y社・登録商標)を習っていた私。

当時はまだ講師資格を得られる級にも達していなかったが
一応、つぶやいてみた。

芸術は皆に感動を与える立派な仕事だよ!
と言われて、ちょっぴり嬉しかった。

特許のいらない世界

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特許の仕事は、本来、無くても良いのかもしれない。

命を救ったり
芸術のように人々に感動を与えるものでも無い。

けれども、思った。

本当は無くて良い(無い方が良い?)のかもしれないが
少なくとも、今
目の前に必要とされている仕事がある。

その仕事が、自分の性に合っており
それを頑張るコトで
誰かが喜んでくれる。

なら、それで十分じゃぁないか!?

いつか、必要とされなくなったときには
(それはそれで悲しいけど)
素敵な世の中になっているって事だし。

だったら、少なくとも
必要とされている間、目一杯誰かの役に立とう。

技術そのものや芸術のように
自分では何か新しいモノは作り出せない。

けれど、少なくとも
一緒に仕事をした人に
一緒に仕事をしている間
何らかの感動を与えられれば良いな。

特許のいらない世界

終わった後に
また一緒に仕事したい!
と思って貰えれば良いな。

私が、頼まれもしないのに
『知財紙芝居(TOMO’s登録商標)』
で説明したりする理由は
こういうところにある。
(1時間の説明に
少なくとも3~4時間準備が必要なんだけど(;^_^A)

特許のいらない世界

*注1:平成元年の入社当時は、「知的財産権」という言葉が
まだ日本では浸透していなかった。

余談であるが
新入社員が、電話を取る際
「ありがとうございます!
●●●●(社名)
工業所、有権センターで御座います!!」
と言ってしまうのは、
丸型の代表社印を「特許願」に捺印する際
(注:電子出願では無かった、紙出願の時代)
印鑑のフタを取らずに押してしまう
いわゆる“日の丸事件”
と共に、春の風物詩であった。
特許のいらない世界
*誤「工業所」「有権センター」
*正「工業」「所有権センター」


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